丸暗記は、いちばん遠回り
最初にお伝えしたいのは、丸暗記はおすすめできないということです。
「犬も歩けば棒にあたる=行動すれば幸運に出会う」。こうして一対一で覚えようとすると、数が増えたとたんに混乱してしまいます。しかも、こうして覚えたものは使えません。実際の場面で「あ、今のはあの『ことわざ』だ」と思い出せないんですね。
では、どうすればいいのでしょう。
答えは、意味を覚えるのではなく、情景を思い浮かべることです。「ことわざ」はもともと、たとえ話として生まれました。だったら、そのたとえをそのまま頭に入れてしまえばいいんですね。
絵を思い浮かべる
「猫に小判」と聞いたら、小判を前にしてきょとんとしている猫の顔を想像してみてください。小判には見向きもせず、あくびでもしているかもしれませんね。
その絵が浮かべば、意味は説明しなくても分かります。「価値の分からない相手には無駄」という理屈を覚えるより、ずっと早くて確実なんですよ。
- 「猿も木から落ちる」…すいすい登っていた猿が、ぽとりと落ちる
- 「馬の耳に念仏」…お経を聞かされても、涼しい顔でいる馬
- 「蛙の面に水」…水をかけられても、まったく動じない蛙
どれも、場面が浮かびますよね。「ことわざ」に動物がたくさん登場するのは、まさにこのためなんです。みんなが知っている生き物だからこそ、たとえとして機能するんですね。
ですから、最初に覚えるなら動物の「ことわざ」からがおすすめですよ。
場面とセットで覚える
次におすすめしたいのが、自分の経験と結びつける方法です。
たとえば、慌てて出かけて忘れ物をしてしまった日。そのとき「急がば回れ」を思い出せば、この言葉は一生忘れません。逆に、机に向かって「急がば回れ=急ぐときほど確実な道を」と唱えても、翌日には消えてしまうでしょう。
これは記憶の仕組みから見ても理にかなっています。感情が動いたときの記憶は、強く残るんですね。悔しい、嬉しい、おかしい——そうした気持ちと一緒に覚えた言葉は、必要なときにちゃんと出てきてくれます。
ですから、無理に覚えようとしないことも大事です。日々の暮らしのなかで「あ、これだ」と感じた瞬間に一つずつ拾っていく。そのほうが、結果的にはたくさん身につきますよ。
声に出す
「ことわざ」は、もともと声で伝えられてきた言葉です。
文字が広まる前の時代、大切な知恵は口から口へと受け渡されました。だから短くて、リズムがよくて、一度聞いたら忘れない形だけが生き残ったんですね。このあたりは「ことわざの起源」のページで詳しく紹介しています。
つまり「ことわざ」は、声に出したときにいちばん力を発揮するようにできているのです。
試しに読んでみてください。
「犬も歩けば 棒にあたる」「聞くは一時の恥 聞かぬは一生の恥」「立つ鳥 あとを濁さず」
気持ちよく口から出てきますよね。黙って目で追うより、声に出したほうが何倍も入ってきます。お子さんと一緒に覚えるなら、なおさらですね。
仲間でまとめて覚える
ばらばらに覚えるより、似たもの同士をまとめると効率が上がります。
同じ意味で、動物だけが違うもの
- 猫に小判
- 犬に論語
- 馬の耳に念仏
- 豚に真珠
- 牛に対して琴を弾ず
これらは全部「価値の分からない相手には無駄」という意味です。一つ覚えれば、あとは動物を入れ替えるだけ。五つまとめて身につきますね。
反対の意味で対になるもの
- 善は急げ ⇔ 急がば回れ
- 渡る世間に鬼はなし ⇔ 人を見たら泥棒と思え
- 朱に交われば赤くなる ⇔ 泥中の蓮
対にして覚えると、どちらも忘れにくくなります。しかも「場面によって使い分ける」という感覚まで一緒に身につくんですよ。
同じ動物でまとめる
これは、このサイトの作りそのものですね。犬なら犬、猫なら猫と、動物別にまとめて読んでいく方法です。一つの動物がどんなイメージで語られてきたかが見えてきて、記憶に残りやすくなります。
動物にまつわることわざ
かるたで遊ぶ
遊びながら覚えるのが、いちばん楽な方法です。
江戸時代に作られた「いろはかるた」は、まさにそのための道具でした。四十八枚で四十八の「ことわざ」が覚えられる仕組みになっています。
しかも絵札には情景が描かれていますから、先ほどお話しした「絵を思い浮かべる」方法とも相性がいいんですね。遊んでいるだけで、言葉と絵が自然に結びついていきます。
いろはかるたについては「いろはかるたで覚えることわざ」のページで詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。地域によって札の中身が違うという、面白い話も載せていますよ。
なお、お子さんに「ことわざ」を教える立場の方は、「子どもに教えたいことわざ」のページもご覧ください。年齢に合った言葉の選び方や、教えるときのコツを紹介しています。
由来を知る
少し遠回りに思えるかもしれませんが、由来を知ると忘れなくなります。
たとえば「虎の威を借る狐」。これは中国の昔話で、狐が虎を自分のうしろに歩かせて、ほかの動物たちを怖がらせたという話からきています。この物語を一度読んでおけば、言葉の意味を思い出す必要すらありません。場面がそのまま浮かんできますからね。
特に故事成語は、もとの話を知らないと意味が分かりにくいものばかりです。「五十歩百歩」も「画竜点睛」も、物語とセットで覚えるのが近道ですよ。
このサイトでは、それぞれの「ことわざ」に由来を添えていますので、ぜひ読んでみてください。
使ってみる
最後に、いちばん効果のある方法をお伝えしましょう。
実際に使ってみることです。
覚えた「ことわざ」を、会話の中で一度使ってみてください。たった一回でも、自分の口から出した言葉は定着します。友達との雑談でも、家族との会話でも構いません。
もちろん、使う相手や場面には気をつけたいところですね。目上の方に失礼になる「ことわざ」もありますから、そのあたりは「ことわざを使うときに注意したいこと」のページでご確認ください。