ことわざ動物園

動物が教えてくれる季節のことわざ

春はうぐいす、夏はほたる、秋は虫の声、冬は雁の群れ——季節の移ろいを、昔の人は身近な生き物の姿で感じ取っていました。そんな季節感が、そのまま「ことわざ」になっているものも少なくないんですよ。ここでは春夏秋冬に分けて、動物が登場する季節の「ことわざ」を紹介していくことにしましょう。

春のことわざ

梅に鶯

意味

取り合わせのよい二つのもの。よく似合う組み合わせのたとえ。

由来

梅の枝にうぐいすがとまる構図は、絵や和歌の定番でした。春を代表する景色として親しまれてきたことに由来しています。「松に鶴」「牡丹に唐獅子」なども同じ意味で使われますね。

猫が鳴けば春

意味

猫の発情期の鳴き声が聞こえると、春が近いということ。

由来

猫は年に数回発情期を迎えますが、特に早春のものが目立ちます。夜中に響くあの独特の声を、昔の人は季節の知らせとして受け取っていたんですね。猫については「猫のことわざ」のページもご覧ください。

蛙が鳴けば田植え

意味

蛙の声が盛んになるころが、田植えの時期だということ。

由来

気温が上がって蛙が活発になる時期と、田植えの適期が重なることに由来しています。時計も暦も身近になかった時代、生き物の様子は立派な農作業の目安でした。

蛙のことわざ

夏のことわざ

飛んで火に入る夏の虫

意味

自分から進んで危険に飛び込み、災いを招くこと。

由来

夏の夜、虫が明かりに誘われて火の中に飛び込んでしまうことに由来しています。夏の夜の風物詩が、そのまま戒めの言葉になったんですね。

虫のことわざ

蛍二十日に蝉三日

意味

物事の盛りは短い、はかないものだということ。

由来

蛍が光るのは二十日ほど、蝉が鳴くのは三日ほど——そう言われてきたことに由来しています。実際にはもう少し長いのですが、夏の短さとあわせて、はかなさの象徴とされてきました。

蝉が鳴くと梅雨が明ける

意味

蝉の声が聞こえはじめたら、梅雨明けが近いということ。

由来

蝉は気温が一定以上にならないと羽化しません。そのため初鳴きが、夏本番の知らせになるんですね。

蚊の鳴くような声

意味

か細くて、聞き取れないほど小さな声のこと。

由来

蚊の羽音がごくかすかであることに由来しています。夏の夜、耳元であの音がすると眠れなくなりますよね。

秋のことわざ

天高く馬肥ゆる秋

意味

秋の空は高く澄み渡り、馬も食欲が増して太る。過ごしやすい、気持ちのよい季節だということ。

由来

もとは中国の詩の言葉で、秋になると北方の騎馬民族の馬が肥えて攻めてくるため警戒せよ、という意味でした。それが日本では、さわやかな秋をあらわす言葉として使われるようになったんですよ。

馬のことわざ

秋の鹿は笛に寄る

意味

恋に心を奪われて、自ら危険に近づいてしまうこと。また、弱みにつけ込まれやすいこと。

由来

秋の繁殖期の鹿は、仲間を呼ぶ鳴き声に似せた猟師の鹿笛に誘われ、捕らえられてしまうことに由来しています。秋の夜に響く鹿の声は、和歌でもたびたび詠まれてきました。

秋の鹿は笛一本

意味

たやすく人の思いどおりになってしまうこと。

由来

こちらも同じく、笛一本で鹿が寄ってくることに由来しています。

雁が渡ると冬が近い

意味

雁の群れが空を渡っていくのを見たら、冬が近づいているということ。

由来

渡り鳥は季節の移り変わりを正確に知らせてくれます。「雁が来ると雪が来る」という言い方をする地域もありますね。

鳥のことわざ

冬のことわざ

夜の鶴

意味

親が子を思う気持ちが、とても深いということ。

由来

鶴は寒い夜になると、自分の羽で子を包んで温めるとされます。「焼け野の雉、夜の鶴」という形で使われることが多いですね。

鶴と亀のことわざ

夏の虫氷を笑う

意味

見識の狭い者が、自分の知らないことをばかにすること。

由来

中国の『荘子』に由来しています。夏にしか生きられない虫は氷の存在を知らないため、氷の話を聞いても信じずに笑ってしまう、ということですね。夏と冬、両方の季節が出てくる面白い「ことわざ」です。

熊が木の実を集めると雪が早い

意味

熊が早くから冬ごもりの支度をする年は、雪の降り出しが早いということ。

由来

山に暮らす人々が、動物の行動から冬の訪れを読み取ってきたことに由来しています。科学的な裏づけははっきりしませんが、長年の観察から生まれた知恵ですね。

寒鴉(かんあ)枯木に鳴く

意味

冬のものさびしい情景のたとえ。

由来

葉を落とした木に烏がとまって鳴いている——そんな寒々とした景色を言いあらわした言葉です。

雪の下にも鼠

意味

どんな厳しい環境でも、生きているものはいるということ。

由来

一面の雪の下でも、ネズミは雪のトンネルを掘って活動しています。見えなくても生命は営まれている、ということですね。

季節と動物、切っても切れない関係

こうして並べてみると、あることに気づきます。

昔の人にとって、季節の変わり目を知らせてくれたのはカレンダーではなく生き物だったということです。うぐいすが鳴けば春、蝉が鳴けば夏、雁が渡れば冬。田植えの時期も、蛙の声が教えてくれました。

今は天気予報も暦もすぐ手に入りますが、ふと耳をすませば、季節を知らせる声は今も聞こえてきますよね。春先にうぐいすの下手な鳴き声を聞いたり、夏の終わりに虫の音が変わったことに気づいたり。そんなとき、昔の人と同じものを感じ取っているのだと思うと、ちょっと嬉しくなりませんか。

天気を知らせる動物の「ことわざ」については、「動物が出てくる天気のことわざ」のページでも紹介していますので、あわせてご覧くださいね。