ことわざ動物園

手紙やスピーチで使えることわざ

結婚式のスピーチ、送別会の挨拶、年賀状のひとこと。いざ言葉を用意しようとすると、なかなか思い浮かばないものですよね。そんなとき「ことわざ」を一つ添えるだけで、ぐっと引き締まった挨拶になるんですよ。ここでは場面別に、使いやすい言葉を紹介していくことにしましょう。

お祝いの席で

結婚式や新築など、お祝いの席で使えることわざを見てみましょう。

結婚式で

鴛鴦(えんおう)の契り

仲のよい夫婦のたとえです。「鴛鴦」とはおしどりのこと。おしどり夫婦という言葉のもとになっています。

偕老同穴(かいろうどうけつ)

ともに老い、同じ墓に入るという意味で、夫婦が最後まで添い遂げることをあらわします。格調高い言葉ですので、改まった挨拶に向いていますね。

子はかすがい

お子さんが生まれたご夫婦へのお祝いにも使えます。二つの木材をつなぎとめる金具にたとえた言葉で、くわしくは「職人の仕事から生まれたことわざ」のページもご覧ください。

使い方の一例

「本日は誠におめでとうございます。偕老同穴という言葉がございますが、お二人にはどうかいつまでも仲睦まじく、ともに歳を重ねていただきたいと願っております。」

新築・開店のお祝いに

千里の道も一歩から

新しい門出にふさわしい言葉ですね。これから始まる道のりへの励ましになります。

商いは牛の涎(よだれ)

商売は細く長く、気長に続けることが大切だという意味です。開店祝いに添えると、実のある励ましになりますよ。

牛のことわざ

長寿のお祝いに

鶴は千年、亀は万年

長寿とめでたさの代表ですね。還暦や米寿のお祝いの定番です。

鶴と亀のことわざ

亀の甲より年の劫(こう)

年長者の経験は何よりも尊い、という意味です。ご年配の方を立てる場面で使えますね。

送別・退職の挨拶で

次は、送別会や仕事仲間の退職時などに使えることわざを見てみましょう。

送り出す側から

鵬程(ほうてい)万里

これから先の、はるかな道のりのこと。新天地へ向かう方へのはなむけにぴったりです。

旅は道連れ世は情け

転勤や引っ越しで離れる方へ。新しい土地でも人に恵まれますように、という願いを込められます。

縁は異なもの味なもの

人の縁は不思議なもの、という意味です。「またどこかでお会いしましょう」という気持ちを伝えられますね。

使い方の例

「〇〇さんとは三年間、ともに仕事をさせていただきました。縁は異なもの味なものと申します。これでお別れではなく、またどこかでご一緒できる日を楽しみにしております。」

去る側から

立つ鳥あとを濁さず

去り際をきれいにする、という心構えをあらわします。自分の退職の挨拶で使うと、謙虚な印象になりますね。

鳥のことわざ

袖振り合うも多生の縁

ちょっとした出会いも、前世からの縁によるもの、という意味です。お世話になった方々への感謝を伝える場面に合います。

使い方の例

「至らぬ点も多々ございましたが、立つ鳥あとを濁さずの言葉どおり、残りの期間、きちんと引き継ぎをしてまいります。」

励ましのメール・手紙で

試験を控えている人や、なにかうまくいかないことを抱えている人への励ましのメール・手紙で使えることわざを見てみましょう。

受験や試験を控えた人へ

人事を尽くして天命を待つ

やるべきことをすべてやったら、あとは天に任せる、という意味です。プレッシャーをやわらげる言葉ですね。

石の上にも三年

努力を続けている人へ。「あと少しだよ」という気持ちを込められます。

蛍雪(けいせつ)の功

苦労して勉学に励んだ成果、という意味です。中国の故事に由来していて、卒業や合格を祝う場面にぴったりですよ。

虫のことわざ

うまくいかない人へ

七転び八起き

何度失敗しても立ち上がる、という励ましの定番ですね。

人間万事塞翁(さいおう)が馬

今の不運が、後になって幸運につながるかもしれない、という意味です。落ち込んでいる方に、そっと差し出したい言葉ですね。

待てば海路の日和(ひより)あり

今は悪くても、待っていればよい機会が巡ってくる、という意味です。

年賀状・季節の挨拶に

年賀状や季節の挨拶にも使えることわざを見てみましょう。

年賀状に

その年の干支にちなんだ「ことわざ」を添えると、気の利いた一言になりますよ。

  • 子(ねずみ)年…窮鼠猫を噛む、ではさすがに不穏ですので、「鼠が塩を引く」(こつこつ積み重ねる)あたりが無難ですね
  • 丑(うし)年…牛歩ながらも着実に、という意味で「牛の歩みも千里」
  • 寅(とら)年…「虎穴に入らずんば虎子を得ず」で、挑戦の年に
  • 卯(うさぎ)年…「兎の登り坂」で、勢いよく進む一年に
  • 辰(たつ)年…「登竜門」「鯉の滝登り」で、飛躍の年に
  • 巳(み)年…「蛇は寸にして人を呑む」で、才能の開花を
  • 午(うま)年…「天高く馬肥ゆる秋」は秋の言葉ですので、「馬が合う」くらいが使いやすいですね
  • 未(ひつじ)年…穏やかさの象徴として
  • 申(さる)年…「猿も木から落ちる」は少し後ろ向きですので、使いどころにご注意を
  • 酉(とり)年…「鶏口となるも牛後となるなかれ」で、独立の年に
  • 戌(いぬ)年…「犬も歩けば棒にあたる」で、行動の年に
  • 亥(い)年…「猪突猛進」で、まっすぐ進む一年に

十二支の「ことわざ」については「十二支のことわざ」のページでまとめていますので、あわせてご覧ください。

季節の便りに

一年の計は元旦にあり

年始の挨拶の定番ですね。

暑さ寒さも彼岸まで

季節の変わり目のお便りに。相手の体調を気遣う言葉として、自然に使えます。

天高く馬肥ゆる秋

秋のお便りに。さわやかな季節感が伝わりますね。

馬のことわざ

使うときに気をつけたいこと

最後に、いくつか注意点をお伝えしておきましょう。

お祝いの席では「別れ」を連想させる言葉を避ける

結婚式では「切れる」「別れる」「終わる」を思わせる言葉は慎む習わしがあります。「立つ鳥あとを濁さず」は良い意味の「ことわざ」ですが、別れを連想させますので、お祝いの席には向きません。

お悔やみの場では重ね言葉を避ける

「重ね重ね」「たびたび」など、不幸が繰り返されることを思わせる言葉は避けられます。「二度あることは三度ある」なども、この場にはふさわしくありませんね。

目上の方を評価する言葉は使わない

「猿も木から落ちる」「弘法にも筆の誤り」は、失敗を慰める言葉です。けれど目上の方に向けると、「あなたも人間ですね」と評価しているように聞こえてしまいます。

一つだけ、さりげなく

スピーチのなかで「ことわざ」をいくつも並べると、かえって軽く聞こえてしまいます。ここぞという場面で一つだけ。そのほうが、ずっと印象に残りますよ。

また、「〜と申します」「〜と言いますが」と添えると、自分の断定ではなく昔からの言い伝えを引用する形になり、角が取れます。

このあたりについては「ことわざを使うときに注意したいこと」のページでも詳しく紹介していますので、あわせてご覧くださいね。

ひとことが、記憶に残る

結婚式でも送別会でも、挨拶の内容はたいてい忘れられてしまうものです。

けれど「ことわざ」が一つ入っていると、不思議と残るんですね。何百年も語り継がれてきた言葉には、それだけの力があるということでしょう。

大切な場面で、大切な方へ。ぴったりの一言が見つかりますように。