ことわざ動物園

鶴と亀にまつわる「ことわざ」

おめでたいものの代表といえば、やはり鶴と亀ですよね。お祝いの席の飾りや、結婚式の装いにもよく使われます。どちらも長生きの象徴として、昔から大切にされてきた生き物なんですよ。ここでは、そんな鶴と亀にまつわる「ことわざ」を紹介していくことにしましょう。

鶴と亀にまつわる「ことわざ」

亀の甲より年の劫(こう)

意味

年長者の豊かな経験は、何よりも尊いということ。

由来

亀の「甲(こう)」と、長い年月を意味する「劫(こう)」をかけた言葉です。亀の甲羅よりも、長年積み重ねた経験のほうが値打ちがある、ということですね。「亀の甲より年の功」と書かれることもあります。

使い方

やはり先輩の判断は的確でした。亀の甲より年の劫ですね。

亀の年を鶴がうらやむ

意味

欲望にはきりがないということ。すでに十分に恵まれているのに、さらに上を求めること。

由来

千年も生きるという鶴が、それでも万年生きる亀をうらやましがる、ということに由来しています。十分に長生きなのに、もっともっとと望む姿を戒めた言葉ですね。

使い方

これ以上を望むのは、亀の年を鶴がうらやむというものでしょう。

鶴の脛(はぎ)も切るべからず

意味

ものにはそれぞれ本来の姿があり、むやみに手を加えてはいけないということ。

由来

中国の『荘子』に由来しています。鴨(かも)の脚が短いからといって継ぎ足せば苦しむし、鶴の脚が長いからといって切れば悲しむ。自然のままがいちばんよい、ということですね。

使い方

その仕様は変えないほうがいいですよ。鶴の脛も切るべからず、です。

石亀(いしがめ)の地団駄(じだんだ)

意味

力の及ばない者が、どうにもならずに悔しがること。

由来

小さな石亀が、短い脚でいくら地団駄を踏んでも、どうにもならないことに由来しています。「鼈(すっぽん)の地団駄」とも言います。

使い方

実力の差は歴然でした。石亀の地団駄を踏むばかりです。

兎と亀

意味

才能に頼って油断する者より、たとえ遅くても着実に努力する者が勝つということ。

由来

イソップ童話の一編に由来しています。足の速い兎が、亀に勝てると油断して昼寝をしているうちに、こつこつ歩き続けた亀に追い抜かれてしまったというお話ですね。

使い方

毎日少しずつ続けた結果、追い抜くことができました。まさに兎と亀です。

「鶴は千年、亀は万年」「掃き溜めに鶴」「焼け野の雉(きぎす)、夜の鶴」「鶴の一声」

これらは「鳥のことわざ」のページで詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

鶴と亀って、どんな動物?

まずは鶴から見ていきましょう。鶴はツル科の鳥で、世界に15種ほどが知られています。日本で見られる代表はタンチョウで、北海道の釧路湿原などに生息しています。頭のてっぺんが赤いのが特徴ですが、あれは羽ではなく、皮膚がむき出しになっている部分なんですよ。翼を広げると2メートル以上にもなり、優雅に舞う姿から「瑞鳥(ずいちょう)」、つまりめでたい鳥として大切にされてきました。寿命は20年から30年ほどで、千年には遠く及びませんが、鳥としてはかなりの長生きです。鶴が一生同じ相手と添い遂げるという話を聞いたことはありませんか?実際、鶴は強い絆で結ばれたつがいをつくることが知られていて、夫婦円満の象徴ともされているんですね。

一方の亀は、爬虫(はちゅう)類の仲間です。恐竜が登場するよりも前、2億年以上前から地球にいたとされる、たいへん古い生き物なんですよ。最大の特徴はもちろん甲羅ですが、これは背骨やあばら骨が変化してできたもので、脱ぎ着できるものではありません。甲羅と体はつながっているんですね。寿命は種類によって大きく違い、ゼニガメの愛称で知られるクサガメで30年ほど、ゾウガメの仲間では100年を超える個体も確認されています。万年とはいきませんが、人間より長生きすることもあるわけです。また、亀は代謝がゆっくりで、長期間食べなくても生きられる種がいます。「ゆっくり、着実に」というイメージは、こうした生態から来ているのかもしれません。

鶴と亀にまつわる伝説(昔話)

鶴と亀、それぞれに有名な昔話があります。ここでは二つ続けて紹介することにしましょう。どちらも、助けられた動物が恩を返すところから始まるお話です。

鶴の恩返し

昔々、ある雪の日のこと。貧しいおじいさんが町からの帰り道、罠にかかって苦しんでいる一羽の鶴を見つけました。かわいそうに思ったおじいさんは、罠をはずして鶴を逃がしてやりました。

その夜のことです。吹雪の中、一人の若い娘が「道に迷いました」と戸を叩きました。おじいさんとおばあさんは娘を家に泊めてやり、やがて娘は「どうかここに置いてください」と言って、一緒に暮らすようになりました。

ある日、娘はこう言いました。「機(はた)を織りますので、決してのぞかないでくださいね」娘が織り上げた布は、見たこともないほど美しいものでした。町で高く売れ、暮らしは楽になりました。けれど、織るたびに娘はやせ細っていきます。

心配になったおばあさんは、とうとう約束を破って機織り部屋をのぞいてしまいました。するとそこにいたのは、娘ではなく一羽の鶴。自分の羽を抜いては、布に織り込んでいたのです。

姿を見られた鶴は、静かに言いました。「私は、あの日助けていただいた鶴です。恩を返したかったのですが、もうここにはいられません」そして空へ舞い上がり、家の上を何度も旋回してから、雪空の彼方へ消えていきました。

浦島太郎

昔々、浦島太郎という漁師が、浜辺でいじめられている亀を助けてやりました。数日後、お礼にとやってきた亀は、太郎を背に乗せて海の底の竜宮城へ連れて行きました。

そこは夢のように美しい宮殿でした。乙姫(おとひめ)に迎えられ、鯛やひらめの舞い踊りを眺めながら、太郎は楽しい日々を過ごします。けれど三日が過ぎたころ、故郷の母を思い出し、帰りたいと願い出ました。

乙姫は玉手箱を差し出し、「決して開けてはなりません」と言って見送ります。ところが浜に戻ってみると、知った顔は一人もいません。老人に尋ねると、「浦島太郎なら、七百年も昔に海へ出たきり帰らなかった」と言うではありませんか。

竜宮城での三日は、地上の七百年だったのです。呆然とした太郎は、つい玉手箱を開けてしまいました。立ちのぼる白い煙。それが晴れたとき、そこにいたのは白髪のおじいさんだったということです。

どちらのお話も、約束を破ってしまうところが共通していますね。のぞいてはいけない、開けてはいけない…そう言われるほど確かめたくなるのが、人の心というものなのかもしれません。ちなみに浦島太郎には、最後に太郎が鶴になって飛び去り、亀である乙姫と再会するという結末の伝わり方もあるんですよ。鶴と亀がそろって登場するというわけですね。「鶴は千年、亀は万年」という言葉とも、不思議に響き合っています。