ことわざ動物園

ことわざに出てくる昔の言葉と単位

「一寸の虫にも五分の魂」の「一寸」って、どれくらいの長さかご存じですか?「早起きは三文の徳」の「三文」は、今でいくらくらいなのでしょう。「ことわざ」には、今では使わない昔の言葉や単位がたくさん出てきます。ここでは、そうした言葉の意味と読み方を整理してみることにしましょう。

ことわざに出てくる昔の言葉と単位

長さをあらわす単位

寸(すん)→一寸は約3センチ

「一寸の虫にも五分の魂」の「一寸」ですね。指一本分ほどの長さです。

「五分(ごぶ)」は一寸の半分ですから、約1.5センチ。つまりこの「ことわざ」は、「3センチの虫にも1.5センチの魂がある」と言っているわけです。体の半分が魂というのですから、小さな生き物の必死さが伝わってきますね。

ほかにも「一寸先は闇」「一寸の光陰軽んずべからず」など、「寸」の出てくる言葉はたくさんあります。

虫のことわざ

尺(しゃく)→一尺は約30センチ

十寸で一尺です。「尺」はもともと、手を広げたときの親指から中指までの長さだったと言われています。

「我田引水、尺を以て寸を測る」といった使い方のほか、「尺が足りない」など今でも映像や音楽の世界で使われていますね。

丈(じょう)→一丈は約3メートル

十尺で一丈です。「丈夫(じょうぶ)」という言葉は、もともと一丈ほどの背丈のある立派な男性を指していました。「大丈夫」も、そこから来ているんですよ。

里(り)→一里は約4キロメートル

「千里の道も一歩から」の「里」ですね。千里といえば約4000キロ。日本列島の端から端まで、といったところでしょうか。

「虎は千里行って千里帰る」「牛も千里、馬も千里」など、「千里」はとてつもない距離のたとえとしてよく登場します。

ただし中国の「里」は約400メートルと短く、日本の十分の一ほどです。中国由来の「ことわざ」に出てくる「千里」は、約400キロと考えたほうが近いですね。

間(けん)→一間は約1.8メートル

建物や土地を測るのに使われた単位です。今でも畳の大きさや、家の設計に名残がありますよ。

重さ・量をあらわす単位

匁(もんめ)→一匁は約3.75グラム

「ことわざ」にはあまり出てきませんが、わらべ歌「花いちもんめ」でおなじみですね。

江戸時代の銀貨・重さの単位「匁(もんめ)」を使った表現で、花一匁は銀一匁=約2,000〜3,000円ということになります。

貫(かん)→一貫は約3.75キログラム

千匁で一貫です。お金の単位としても使われました。「貫禄(かんろく)」という言葉は、この「貫」に由来しているんですよ。

升(しょう)・斗(と)・石(こく)→一升は約1.8リットル、一斗は十升、一石は十斗

お米を量る単位ですね。一石はおよそ180リットル、大人一人が一年に食べる米の量とされていました。「加賀百万石」といえば、百万人を養える土地、という意味になります。

「一升徳利に二升は入らぬ」のように、容量のたとえにも使われますね。

お金をあらわす単位

文(もん)→江戸時代の最小単位。現在の価値でおよそ20〜30円

「早起きは三文の徳」の「文」ですね。三文といえば、今でいう百円前後でしょうか。たいした額ではありませんが、「わずかでも得をする」という意味ですから、むしろ少額であることに意味があるわけです。

「二束三文」「三文判」なども同じ単位ですね。どれも「安い」という意味合いで使われています。

両(りょう)→江戸時代の大きな単位。現在の価値でおよそ10万円前後

時代や物価によって大きく変動しますので、あくまで目安です。「一攫千金」の千金は、この「両」に近い感覚ですね。

小判(こばん)一両に相当する金貨

「猫に小判」の小判ですね。今でいえば十万円ほどの価値があったわけですから、猫の前に置いても分からないのは当然かもしれません。

時間をあらわす言葉

一時(いっとき)は約2時間

昔は一日を十二に分けていましたので、一時は今の2時間にあたります。「聞くは一時の恥」の「一時」は、この単位ではなく「ちょっとのあいだ」という意味で使われていますね。

刻(こく)→一刻は約2時間

「丑三つ時(うしみつどき)」は、丑の刻をさらに四つに分けた三番目。今でいう午前2時から2時半ごろですね。十二支が時刻をあらわすのに使われていた名残です。

くわしくは「十二支のことわざ」のページもご覧ください。

劫(こう)→きわめて長い時間

仏教で使われる単位で、具体的な長さではありません。天女が百年に一度おりてきて、大きな岩を衣でなでる。その岩がすり減ってなくなるまでが一劫——そんなたとえで説明されます。

「亀の甲より年の劫」の「劫」がこれですね。「億劫(おっくう)」も同じ言葉ですよ。

昔の暮らしの言葉

馬子(まご)→馬を引いて、人や荷物を運ぶ仕事をする人

「馬子にも衣装」の馬子ですね。「孫」ではありませんので、ご注意を。身分の低い仕事とされていましたから、「そんな人でも着飾れば立派に見える」という意味になるわけです。

馬のことわざ

烏帽子(えぼし)→昔、公家や武士がかぶっていた帽子

「猿に烏帽子」で出てきますね。身分の高い人のかぶり物ですから、猿には似合わない、というわけです。

袈裟(けさ)→僧侶が身につける衣

「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の袈裟ですね。

臼(うす)・杵(きね)→餅をつく道具

臼が下の器、杵が打ちおろす棒です。「猿婿入り」の昔話にも登場しますね。

鰹節(かつおぶし)→かつおを干して固めた食品

「猫に鰹節」でおなじみですが、昔は今よりずっと貴重な食品でした。

小僧(こぞう)→寺で修行する少年。また、商家の見習い

「門前の小僧習わぬ経を読む」の小僧ですね。

杓子(しゃくし)→汁物をすくう道具。今でいうおたま

「猫も杓子も」で出てきます。この言葉の由来には諸説あり、「禰子(ねこ=神職)も釈氏(しゃくし=僧侶)も」がなまったという説もあるんですよ。

筌(せん・うえ)→魚を捕るための竹製の道具

「魚を得て筌を忘る」で出てきます。竹を編んで作った、細長いかごのような仕掛けですね。

棹(さお)→舟を進めるための長い棒

「流れに棹さす」の棹です。川底を突いて舟を進める道具ですから、流れに乗って加速する——これが本来の意味なんですね。「流れに逆らう」と誤解されやすい「ことわざ」です。

うだつ→隣家との境に立てる、小さな防火壁

「うだつが上がらない」の「うだつ」です。費用がかかるため、裕福な家でなければ設けられませんでした。ただし、梁の上に立てる短い柱のことだとする説もあります。

職人の仕事から生まれたことわざ

かすがい→二つの木材をつなぎとめる、コの字形の金具

「子はかすがい」のかすがいですね。

読み方が難しい言葉

最後に、読み間違えやすい言葉をまとめておきましょう。

言葉読み方出てくる「ことわざ」
一時いっとき聞くは一時の恥
三文さんもん早起きは三文の徳
五分ごぶ一寸の虫にも五分の魂
馬子まご馬子にも衣装
河豚ふぐ河豚は食いたし命は惜しし
俎板まないた俎板の鯉
鰯いわし鰯の頭も信心から
泥鰌どじょう柳の下にいつも泥鰌はおらぬ
蟷螂とうろう蟷螂の斧
蝸牛かぎゅう蝸牛角上の争い
雉きじ雉も鳴かずば撃たれまい
鵜う鵜の目鷹の目
閑古鳥かんこどり閑古鳥が鳴く
蝙蝠こうもり鳥なき里の蝙蝠
烏帽子えぼし猿に烏帽子
袈裟けさ坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
沙汰さた地獄の沙汰も金次第
頭こうべ正直の頭に神宿る

言葉の向こうに、昔の暮らしがある

「ことわざ」に出てくる単位や道具は、どれも昔の人が毎日使っていたものです。米を量る升、餅をつく臼、舟を進める棹、魚を捕る筌。今では博物館でしか見られないものもありますが、当時は暮らしのすぐそばにありました。

だからこそ、たとえとして使えたわけです。相手が知らないものでは、たとえになりませんからね。

逆に言えば、「ことわざ」を読み解くことは、昔の暮らしを知ることでもあります。「一寸」がどれくらいか分かれば、虫の小ささが実感できる。「三文」がいくらか分かれば、早起きの得がささやかなものだと分かる。

意味だけ覚えるより、ずっと面白いと思いませんか。

「ことわざ」がどのように生まれたかについては「ことわざの起源」のページで紹介していますので、あわせてご覧くださいね。